作品ギャラリー最終更新 2024年5月8日

ペンによる風景画スケッチを独学でマスターする際役立った教本

ペン(万年筆)で風景画スケッチを描く手法は独学で覚えました。

絵の教室や講座はいくつか参加したことがあるものの、結局「描ける」という実感を得るレベルに達することができませんでした。どうも私の場合は誰かに教わるより、試行錯誤を重ねて自分に合うものをつかんでいくほうが合っていたようです。

私のように独学している誰かの参考になれば、とこれまで影響を受けたスケッチ教本をまとめてみました。

洋書が多くありますが、今はスマホのGoogleレンズというアプリを使えば簡単に日本語訳できます。英語が苦手な方でも十分意味を読み取れるのでご安心を。

目次

遠近法を使わなくても、風景スケッチはできると教えてくれた本「Freehand Sketching: An Introduction」

「Freehand Sketching: An Introduction」(洋書)では、ステップバイステップのやり方は基本的な部分しか紹介されていません。どちらかというと、描き方ではなく考え方を教えてくれるタイプの教本だと思います。

それでも遠近本をマスターしないと風景画は描けないと思っている方には、転機となる可能性を秘めた一冊かと。日本で売られている風景スケッチ教本の多くは、遠近法の習得を前提として書かれているからです。

「遠近法を使わなくても、こんなやり方で描けるよ」といくつものやり方を見せてくれたのは、当時衝撃的でした。

遠近法音痴でも、スケッチャーになれるんだ……!

ネガティブシェイプの考え方も初めて知ったのはこの本

海外ではこの本のように、絵を専門としない建築学科の生徒などへ向けて遠近法を前提としないスケッチ教本も出ています。

私のように遠近法でつまづいてしまい、先へ進めていない方はぜひ目を通してみてください。一般書よりはやさしい英語なので、各翻訳アプリでもかなり正確に訳してくれると思います。

フリーハンド(遠近法なし)で風景の描き方を教えてくれる良書

※追記:Amazonだと価格が高騰していますが、このスケッチ教本を無料で読む方法があります。

海外の読み放題サイト「Scribd」というサイトにこの本が登録されています。無料お試しを申し込めば、0円で読めます(※有料会員へ移行する前に解約してください。サブスクリプションの意味が理解できない方にはおすすめしません)

このサイト、他にもスケッチ教本、絵画教本が多数登録されています。英語に抵抗がない方にはイチオシです。

草一本の描き方から教えてくれた、この世でいちばんやさしい風景スケッチ教本「Pen and Ink Workbooks」シリーズ

私が知っている限りではありますが。この「Pen and Ink Workbooks」よりやさしい風景スケッチ教本は世界中探してもないと思います。

それこそ、草一本、岩一つの描き方からドリル形式で地道にでも着実に教えてくれる本です。小学生でも取り組める難易度だと思います。この本の存在を知った時は本当に感動しました。

急がば回れ、という言葉を思い出すスローペースで進みます

私は万年筆でスケッチを始めたのですが、万年筆による風景スケッチの作例本ってかなり少ないんですよね。

絵の本場はやはり海外。日本になくても洋書にあるのでは?と教本巡りをしていたら、この本を見つけました。

おそらくは万年筆、またはつけペンで描かれてると思われるこの本。ニブで描くことになれていない万年筆初心者さんの筆記練習用にも最適かと。

シリーズ物になっていますが、Kidle読み放題に入っていると数冊は無料で読めます(2024年3月現在)。リンク先のページで、著者名をクリックして下さい。他の本も確認ができます。

英語レベルはかなりやさしめ。文章も短めかつ同じ単語の登場が多く、人によっては辞書なしでも読めるかも。

ドリル形式のとてもやさしい風景スケッチ教本です
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他の風景スケッチャーの作例を見たいときに便利「The Art of Urban Sketching」

もし研究用にスケッチ作品集を手元に置くなら、この「The Art of Urban Sketching: Drawing On Location Around The World」をおすすめします。300ページ超えの大ボリュームです。

初心者のスケッチャーさんから上級者まで、何度でも見返したくなる一冊だと思います。

自分でも何作か描けるようになってくると、「他の人は木をどうやって描いてるんだろう?」など他人の作例が気になりますよね。そんな時リファレンス用にこの本があると重宝します。

また、多くの人がスケッチにかかった所要時間も載せてくれているのもポイント。

「この絵、私なら●分くらいで描けるかな…」と予想しながら読んでみるのも楽しいです。

初心者である自分よりずっと時間がかかっている人、複雑なものをおそろしいほど短時間で仕上げている人など様々です。

私は一時期遅筆であることに悩んでいたので、この本でもっと時間をかけて描いている人がいるのを見つけてホッとしました。どんなに時間がかかっても、風景スケッチャーとして問題はないんだなと。

この本はプロの絵描きもアマチュアもひっくるめて、世界中からバラエティ豊かな作品を集めています。だから他の作品集よりもずっと、自分のレベルに近い作品が見つかります

興味深いのが、作例の描き手たちへのインタビューや彼らの絵に対するコメントの紹介。

「こういう考え方も素敵だな」とスケッチャーとしての生き方・振る舞い方の参考になります。

手元に置いておくと重宝する、世界中の風景スケッチを集めた一冊
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この本もScribdで読めます。しかもダウンロードまで可能でした。

今は円安のせいなのか、Amazonだと5千円近くの高値で売られています。それならScribdで入手してしまうのがお得かと。

旅スケッチデビューする前に読みたい「3段階早描きスケッチ」

実際外で風景スケッチの練習を始めると、ひとつの壁にぶち当たります。それは一枚を描き上げるのにあまりにも時間がかかること。

風景スケッチャーの人たちはこの問題にどう対処しているか調べてみると、手早く仕上げる時短テクニックを用いてるらしいことがわかりました。

野外だといつ天気が急変するかわかりません。観光地など人が多ければ長く場所を占有できませんし、旅先なら次の場所へ移動するタイムリミットもあります。室内のようにゆっくりスケッチはできないのです。

そのため、旅スケッチャーを目指すなら時短テクニックの習得は避けて通れない問題です(でもここに注力したスケッチ本はほとんど見かけないという不思議)。

じゃあ、限られた時間で作品として仕上げるにはどうしたらいいのか。その質問に答えてくれるのがこの「3段階早描きスケッチ」です。

著者は水彩やパステルで着彩して仕上げていますが、線画の過程に本の解説の多くを割いてくれています。私のようにペンスケッチのみやってる人にも十分参考になります。

旅スケッチにおける、現場と宿における作業の分業。線画で時間を食わないための擦筆併用、対象別の省略テニックなど。

特に初めてのスケッチ旅前に読んで練習しておくと、かなりの時間短縮につながるはずです。

旅スケッチに興味がある人は必読。現地で手早く仕上げるテクニックを教えてくれます。

個人的には一番実用性が高かった本です。この本をヒントとしてスケッチのやり方を改良し以前よりも早く描けるようになりました。

スケッチスタイルの使い分けの実例が参考になる「魅せる水彩風景スケッチ」

著者の佐々木清さんという方は、本書のような時短スタイルも得意な一方。時間をかけた繊細な絵も描ける方です。

先ほどの本を読んだ後、この「魅せる水彩風景スケッチ」を見ると同じ描き手なのかと驚きます(※購入後しばらくするまで、同じ人の絵だと気づきませんでした)。

使える時間によって、時短スタイル通常スタイル2つの描き方を柔軟に使い分ける

「3段階早描きスケッチ」と並べて見ていると、そんなやり方も見えてきます。

※この本自体は、中級者向けの作品集・ヒント集といった趣です。絵の描き方のハウツーを知りたいスケッチ初心者さんには他の本をおすすめします。

「3段階早描きスケッチ」と比較しながら見ると色々気づきがあります(中級者向け)
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クリエイティブライセンスという考え方を教えてくれた「Tate: Sketch Club Urban Drawing」

「Tate: Sketch Club Urban Drawing」は一人の絵描きさんによる、建物を中心とした風景スケッチの教本です。

優しめの英語で描かれていますが、描き方の手順がやや省略気味。構図やお題も難易度が高めのところから話が始まるので、レベル的にはスケッチ中級者さん向けかと。私もスケッチ活動を始めて数年経ってから入手しました。

初心者レベルを抜けた人が、さらに上を目指したい時に読んでほしい本です。

描き方のハウツー本としては省略気味ですが、その分著者のスケッチに対する思考が詳しく述べられています。スケッチに慣れてきた人でも、なんらかの新しい知見を得られると思います。

個人的に興味深かったのが、「クリエイティブライセンス」についての解説(クリエイティブ・コモンズではないですよ(^^ゞ)

「クリエイティブライセンス」を簡単に説明すると。風景画において、物の位置など自由に改変してもいいという作家の権利、のことです。

ここまでいろいろな風景画の教本を見てきて、薄々そうなのかなとは感じていたのですが。風景画って、実は改変だらけなんですね。

辺鄙な風景に花を足す、などは朝飯前。建物の影になってる時計塔をちょっくら横へずらす、木を丸ごと消す、なんてことも行われています。

風景として見栄えが出るように、描き手によって演出が施されているといったらいいでしょうか。この点が写真との大きな違いかもしれません。最悪、絵を見て感動して現地に行ったら思ったよりしょぼい風景だったなんてことも(笑)。

でもこのあたり、やってしまっていいのかはっきり言及している教本がなくて。他の本でも何度か見かけていた「クリエイティブライセンス」という単語の意味も、詳しい例を上げてくれたこの本でやっとわかりました。

モノクロスケッチにおけるコントラストの高め方、街における怪しまれない人物スケッチの練習方法なども紹介されています。初心者レベルを抜けてきたスケッチャーさんが読むといろいろ得るものがある本です。

スケッチ初心者を卒業したら読みたい、さらに上を目指すための一冊
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遠近法を使わず、見たままに描くというスケッチを目指して

以上、ペンによる風景スケッチというテーマで個人的に影響を受けた本をまとめてみました。

“遠近法を使わず、見たままに直感的に描く”という私のスケッチ法の土台となった本たちです。

よくある遠近法や精密画の内容はご紹介した本には含まれていません(私自身には合わなかったので…)。ハッチングのやり方など形から入りたい方は、「Pen and Ink Drawing: A Simple Guide」など教科書的な本の併用をおすすめします。

もう人間の歴史が始まって長いので、おおよそのアイデアはこの世に出尽くしていると言われています。ペン画も古代エジプト頃から続いてきたため、その手法はひとつの学問のように確立されています。

けれども、アイデアの組み合わせだけは無限の可能性があります。

様々な絵の描き方や考え方を知り、試し、その中から自分にあったものを選び取り、実際使いながら自分に合わせてカスタマイズしていく。そうしてスケッチャーとしての自分を作っていく

その際手助けになってくれるのが絵の先輩方が描いてくれた、これらの教本です。

ご紹介した本が少しでもあなたのスケッチライフのヒントになれば幸いです。

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